
時事評論:リスクの窓口 (5)
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Tweet「リスク・マネジメント=危険管理」は、一般的には企業に発生する「risk=危険」を管理する為に用いられる理論である。
したがって、リスクマネジメントを論じる時、そこで取扱われる「リスク=危険」の規定が重要な意味を持ってくる。
危険という言葉は、危険な状態、危険な状況あるいは事情、危険事故そのもの、事故発生の可能性、不確実性など多くの意味に使っている。
リスク・マネジメントはアメリカの産業の発展とともに生成され発展してきた。アメリカで管理階層組織による経営を最初に取り入れたのは、1850年代に大規模に成長した鉄道会社であり、他の私企業に比べ人員、資金、設備の点で、量的にも質的にも比べものにならないほど大きく複雑となった。このために近代的経営管理システムが作り上げられ、企業活動を継続して行くため、企業を取り巻くリスクも巨大化し、複雑化していき、具体的に企業リスクへの対処手段として保険を多く利用することになった。
1900年代の初めに、鉄道会社や製造業が保険部を自社内に設置した。また、保険担当者を採用するようになったのである。
1900年代の初頭、近代企業の多くは保険部を設置したが、それは保険購買を取扱う部門でしかなく、積極的な意味での合理的・科学的に企業リスクの処理手段としての保険利用には程遠いものであった。
この当時のアメリカ企業の保険利用は、企業リスクに対応した保険の購買ではなく、一方的な保険会社の販売政策にのっとった保険購入でしかなかった。しかしアメリカは、1929年から1933年にかけ周期的大恐慌に見舞われ、経済的破綻を経験し、ずさんな保険契約は実質的な企業リスクの補填になり得ないこと、保険料は企業の財務を圧迫することが認識し始められ、企業の保険担当者はもっと保険を学ばなければならないとなり、1950年、NAIB(National Association of Insurance Buyers)という団体が設立され、保険担当者のための教育施設を設けたりした。
1955年、ASIM(American Society of Insurance Management :アメリカ保険管理者協会)へ名称変更し、今日的なリスク・マネージャーの職能範囲を規定するもとを示した。
従来の企業の保険担当マネージャーは単なる保険取扱者であり、下級管理者としてあまり希望の持てる職責でなかったとされたが、NAIBからASIMに組織変更された頃より、企業における保険部は単に保険のみを取扱うのではなく、損失予防、企業安全、従業員福祉といった広い範囲の活動をするものとされ、総合的な部門としてインシュアランスマネージャーではなく、リスク・マネージャーによって率いられるべきという意見になり、リスクマネジメントの機会は多くの実務家に支持されアメリカ全土に広まった。
1955年、ASIMが設立されて以降、保険バイヤー企業の保険担当者、学者たちの間でリスクマネジメントの議論が活発となった。
そして、リスクマネジメント部門がトップマネージャー直属スタッフ部門となることが企業に広がった。
1960年には初めて大学のカリキュラムの中にリスクマネジメントが登場した。
「リスク・マネジメント」の時代にいたり、リスクマネージャーは広範な活動を求められるようになり、企業は経営目的を達成する為に、企業資産に影響を及ぼす企業リスク全般にわたる管理をリスクマネジメント部門に求めるようになった。
リスク・マネジメント部門は、損失管理に保険以外の他のものを利用することが必要になったのである。そして、リスク処理技法のロス・コントロールがより重要視されるようになってきたのである。
これまで、企業が損失を被った場合、金銭によって現状回復をはかってきた。確かに、倉庫が火災にあった場合、保険金の支払いを受けることにより損害から回復することが可能であり、企業にとって損失はほとんど発生しない。しかし、仮に病院の発電施設が破損した場合、損害をてん補する保険金はほとんど役に立たない。なぜならば、発電施設が壊れたとき、手術室や集中治療室にいる患者は金銭によっては救済されないからである。
ここでのロス・コントロールは24時間休みなく働き続け、決して壊れない発電機を備え付けておくことなのです。
いまやリスク・マネジメント部門は企業組織のあらゆる部門と密接な関係を保ち、企業全般にわたるリスクを管理するようになった。
労務部門あるいは人事部は、従業員の安全や衛生に責任を負い、生産部門は火災予防や防災管理に責任を負い、生産物の安全に関わる責任は企業の全ての部門と関わりを持ち、クレームは会計部門と関わりを持つことである。
リスクマネージャーは単なる部門の長から、経営全般にわたるエグゼクティブとしての役割を果たすようになったのである。
(参考文献 石名坂 邦昭 リスクマネジメント理論)